ブログ2019.04.28

日本フットサル三国志 第2章 あのチームはどうなった(フトゥーロ) その3 変貌する信之介とフトゥーロ

木暮知彦

その3 変貌する信之介とフトゥーロ

進之介指導

 前回は、都リーグの紹介を交えながら、昨年度のフトゥーロの戦いぶりを書いた。開幕戦の観戦に間に合わなかったこともあるが、今回は観戦が出来たので今シーズン2戦目を書いてみよう。実を言うと、筆者がフトゥーロの試合を見るのは随分前のことで関東リーグ1部を降格して以来だから10年ぶりくらいになる。それこそ、あのチームはどうなったである。

 2019年4月7日、駒沢体育館に着いて、コートを見て驚いたことは、前回、紹介したベテランのブービーこと渡辺淳一と石黒祐二の姿が見えなかったことである。また、信濃啓象はいたが、残念ながら怪我でベンチだった。なんでも14人中9人が退団、2人が復帰、新人4人が入団したそうである。だいぶ、陣容が変わったことになる。
 対戦相手は、前回紹介した創立20周年を誇るフトゥーロと同じ府中市を中心に活動している歴史あるチーム、サンパチオフットサルクラブである。開幕節はフトゥーロと同様に敗戦、どちらも2連敗は避けたい試合である。

 試合は、サンパチオが押し込む展開で始まった。前半のシュート数がサンパチオ22本、フトゥーロ4本の数字が示すとおり、フトゥーロが下がるものだから、簡単にシュートを打たれてしまう。そして4分、サンパチオ25小出慈英が右サイドから左へ横ドリブルを仕掛け、ゴール中央で突き上げるようなシュートを打つと、さすがによく凌いでいたGK1田畑篤史もこれは取れず、サンパチオが先制点。17分にもサンパチオの左キックインから折り返しを36飯野伸介が押し込み追加点。前半はサンパチオオ2-0で折り返す。信之介がピッチに出たのは前半4分からであった。信之介の足さばきは衰えておらず、ワンタッチで簡単に相手をかわし、驚くような正確さでスルーパスを通すのだが、押し込まれているだけに相手ゴールまでの距離が長く、受け手がその機会を活かす前に潰れてしまう。信之介の起点を活かせないのだ。

 筆者が驚かされたのは、個人技が衰えていないということもさることながら、信之介の指導ぶりであり、リーダーぶりであった。プレーの最中でもタイムアウト中であっても、よくしゃべるし、実に細かく注意し、指導を行うのだ。しかも、褒めることを忘れない。そして、「みんなで」の言葉がよく出る。選手達もこれに答えようと耳を傾けるし、実行しようとする。
 昔の信之介はというと、どちらかというとシャイで無口、孤高にプレーする印象があった。しかも、彼のプレー、意図を汲んで支える渡辺英明、小野大輔がいた。今は、一人でやらなければならない厳しさもあるが、逆に育てる楽しさを掴んだ印象さえある。

 後半に入ると、ようやくフトゥーロの反撃が始まる。むろん、攻められる展開に変わりはないのだが、カウンター攻撃が実り始めるのだった。後半4分、カウンターから25小野寺良輔(キャプテン)が、右サイド単独ドリブル突破、そのままキーパーと1対1になり、左のファーに強烈シュートを放つと左サイドネットを揺らした。信之介は自分のことのように喜び、観客に彼の称賛を促すのだった。さらにその4分後、ほとんど同じパターンでまたしても小野寺が得点、ついに2-2の同点とする。

 同点となるとサンパチオの攻撃は厳しさを増し、何度となくフトゥーロのゴールを襲う。しかし、GK1田畑がファインセーブを連発、その均衡を崩さない、田畑といえば、4年前にはフトゥーロにいて、退団してからはフォレストアネックスのGKコーチ、東京都女子選抜のコーチを務めるなどフットサルに関わり続け、9人退団の状況を見て応援入団したのだという。ちなみに昨年度はFP信濃がGKを務め、11試合で失点45、1試合平均失点4.4であった。
 それでも、ついに、サンパチオの猛攻が実を結ぶ。後半10分、サンパチオは左サイドの角度のないところから23戸木秀太がシュートを放つとこれがキーパーの股を抜き、再びサンパチオがリードする。だが、その2分後、執念のフトゥーロ、右サイドからカウンターで持ち込んだ8萩原佳孝がゴールラインぎりぎりで粘り、ゴール中央に折り返すと、そこには信之介が待ち構えていた。これを難なく押し込んで再び同点に持ち込む。

 こうなると、観客もその攻防に騒然、俄かに試合のボルテージが上がるのだった。残り4分には、サンパチオの猛攻にフトゥーロはペナルティ・エリア内で36飯野を倒してしまい、PKを献上する。しかし、25小山のシュートをGK1田畑はキックの方向を読み、これを見事に止める。
 今度は九死に一生を得たフトゥーロが逆に残り1分を切ったところで、なんと信之介がドリブルで抜け出し、右サイドを駆け上がるチャンス。サンパチオのGK1岩本拓也と1対1になるが、信之介、懸命のドリブルで力尽きたかうまく交わすことが出来ず、止められて万事休す。しかし、観客からは信之介のがんばりに大きな拍手が起こった。ちなみに後半のシュート数もサンパチオ22、フトゥーロ9でサンパチオが圧倒していた。

 激しい攻防の都リーグ府中対決は結局3-3で引き分けに終わった。しかし、フトゥーロにとっては収穫のあるリーグ2戦目ではなかっただろうか。それは、陣容ががらり変わったが、それなりに目途がついたこと、専門のGK田畑の好セーブとキャプテン小野寺がチームを救う2得点を挙げ、攻守の要の活躍で負けなかったことである。

 陣容については、ここで紹介しておくと1田畑篤史、2青木雄介、6濱野真吾、11上村信之介、14上村周一郎、15大柴和正、16信濃啓象、18湯本瞬、19日向仁、21井口友博、23杠一樹、25小野寺良輔 (C)らである。 今回の陣容の立て直しという点で特筆すべきは、府中水元クラブ時代からのメンバーである信之介の兄の周一郎が現役復帰している点であろう。(ほかにも紹介したい選手がいるが、紙面の都合で割愛させていただく)
 攻撃の要と目される小野寺は22歳の若手で、高校2年の時にフトゥーロのフットサルにあこがれ、フットボウズのスクールで修行、その後入団したという。これからは信之介が起点となった先でどれだけボールを受け、得点できるかが課題になってくる。その意味では、今回の2得点で小野寺はほっとしたのではないだろうか。

 改めて試合を振り返ってみると、フトゥーロは上村信之介中心のチームではあるが、ベテラン、若手混合の中で前シーズンあわや降格の危機を乗り越えるべく、1つにまとまろう、信之介の指導、叱咤激励に答えようという一体感が生まれていると感じた。そして、信之介には指導者の側面を見た。いつか、現役を引退したら、指導者、監督の道を歩んで欲しいと思う。そんな思いをもって、あらためて2004年7月号のフットサルマガジンピヴォにフトゥーロ特集が掲載されていて、これを読み返したら、代表者の中野光彦、キャプテン上村直が口を揃えてフトゥーロは家族みたいなものと言っていた。その意味ではタイトルには変貌と書いたが、本質のチームの伝統は変わっていないのかも知れない。

 最後に挨拶に行った信之介との別れ際、今度は木暮(賢一郎)と見に来てください、との言葉が印象的であった。さて、写真は、信之介のベンチワークの様子と、キャプテン小野寺のほっとした表情としよう。


小野寺

木暮知彦

木暮知彦

みんサル運営会社のピープルスポーツ株式会社社長。1999年の第1回の関東フットサルリーグ、伝説のスーパーリーグの立ち上げなどに関わった。自らはFIRE FOXの代表として、リーグ優勝、フットサル選手権の優勝を経験した。元フットサル日本代表木暮 賢一郎の父親でもある。

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